「ローマの休日」の公と私・沖縄から豪州への海兵隊の移動は中国近傍からの撤退だし、TPPは米企業を儲けさすために日本経済を弱めてしまうものになる可能性が高い。
1. 「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」・ 獄中十五年、監獄からメッセージを送り続けたジェバリが新首相に
チュニジアに本当の民主化が始まるのか? 三党連立政権のおっかない船出
10月23日投票の結果、単独で過半数を抑えた政党はゼロ。
予測通りにイスラム穏健派(スンニ派)の「アンナハダ」が第一党になったが、第二位は欧米マスコミの予測に反して、左翼的な共和党(共和国評議会)だった。三位につけたのが欧米型民主化を訴えながらも、実はベン・アリ前政権残党色濃いリベラル派が急遽、結成した政党。 この三党による連立政権の枠組み作りに手間取ったものの、11月18日、ようやく新内閣の骨格が固まった。閣僚の指名はこれからである。 新首相には獄中十五年の闘士、ハマディ・ジェバリ(63歳、アンナハダ=復興の意味=党副党首)に決まった。アンナンハダ党は国会議員217議席の89議席を占めるが圧倒的な第一党ではない。 大統領には共和国評議会党(CRP)のモンセフ・マルゾウキがつくが、共和国評議会は29議席しかないうえ、寄� �集め勢力にすぎない。第三党エタカトル党(20議席)からはベン・ジャファー(71歳)が国会議長と、そのパワーは巧妙に振り分けられた。ジャファーは鉄腕の持ち主といわれるが、ベンアリ時代の与党傀儡野党を率いており、獄中体験がない。しかし連立中枢の三党でも議席数合計がようやく64%、これはイスラエル同様に不安定なバランスで基本綱領がまるで違う政治家の寄り合いとなる。政策合意だけで、当面はチュニジアの運命の舵取りをすることになった。 同じ日、エジプトでは軍部の暫定政権然として政局運営に抗議するデモ隊が警官隊と衝突し、一人が死亡、700名が負傷する事態に発展し、ムバラク退陣以後の無秩序状態に回復は見られない。
2. 宮崎正弘の国際ニュース・早読み (読者の声2)
貴誌前号はまるでミャンマー特集でしたが、ミャンマー情勢の変化が興味深いです。ミャンマーは1990年代後半、アセアン加盟するというので日系企業も数多く進出。1996年7月には全日空が関空~ヤンゴン(往路のみ、帰路はバンコク経由)直行便を開設したものの1998年3月に休止という、アウンサンスーチーをめぐる当時の国際情勢(欧米の一方的なスーチーへの肩入れによる経済制裁)に日本も組み込まれた時期でもありました。朝日新聞などはミャンマー人留学生による民主化要求の声は伝えても、ミャンマーの実態については報道しない(報道しない自由は共産圏だけではありませんね)。ミャンマーの仏教について、「仏教原理を価値観の頂点におくため軍人でも有名なパゴダへの参拝と寄付を演出し、憲法を超える宗教律にその 統治の権威をすがる。仏教原理がまつりごとの求心力にある」とのご指摘、ミャンマー・タイ・カンボジアの上座部仏教国に共通する価値観かもしれません。
ミャンマーでは日本の七五三くらいの年齢の子供が馬に乗って行進したりするお祭りや、お寺で僧侶になる儀式を見かけたりします。だいたい小学生くらいの年齢で1週間ほど出家修行するようですが、地方都市の僧院など朝の托鉢前後の時間帯は子供が多いせいか、かなり賑やかです。女子だけの僧院もあり、剃髪・ピンクの僧衣の少女もよく見かけました。ミャンマー仏教では女性の出家は認められていないのですが、尼僧院も3000ヶ所もあるといいます。
ミャンマー・タイ・カンボジアに共通することですが、寺院などで踊りを奉納する光景をよく目にします。日本では七五三も踊りの奉納も神社の領域ですが、明治までは神社とお寺は一体ですから、同じようなものかもしれません。ミャンマーと日本でいちばん違うのが死者の埋葬でしょうか。戦後60年以上経っても遺骨収集に努める日本、ミャンマーではインドと同じく死んだらおしまいで墓もつくらないことが多い。遺体は魂の抜け殻で土葬でも火葬でもいい。貴誌連載の樋泉教授コラムでの中国葬儀事情とは正反対、日本は中国とミャンマーの中間といえばいいのでしょうか。ミャンマーと中国の関係、雲南のタイ族自治区の街にはミャンマー人のエリアがあり、おもに宝石類を扱っていましたが、ロンジー姿のインド系ミャンマー 人も多く、援蒋ルート・インパール作戦といった言葉が身近に感じられたものです。第二次世界大戦ではチェンマイの加藤隼戦闘隊とビルマのロイウィン、ラシオ付近に展開するアメリカのフライングタイガースとの交戦もありました。
拉孟、騰越守備隊の玉砕もありましたが、雲南の怒江(サルウィン河)のゆったりした流れを見ていると戦争は遠い昔のことにも思えます。それでもガイドブックに載っていない橋が次々に架けられ、ダム建設の話などが出てくるとたちまち中国の野望が見え隠れ。ミャンマーは日米中印とも因縁深い地域ですね。 (PB生、千葉)
(宮崎正弘のコメント)竹山道雄『ビルマの竪琴』が、日本の戦後におけるビルマの印象を固定化させた観なきにしもあらず、ですが、その竹山さんを批判攻撃してキャンペーンを張ったのが朝日新聞でした。あの直後(昭和四十二年)に、鎌倉の竹山先生宅を訪問した記憶が蘇りました。 朝日新聞による右翼イメージとまったくかけ離れていて、あの竹山さんはリベラルな教養人でした。ですから 思想的意見ではあわないところが多々ありました。竹山論は女婿の平川裕弘さんが書かれていますね。 話は飛んで拉孟の戦闘ですが、日本女性が現地でいかに活躍し華々しく散ったか、桜林美佐さんに傑作があります。
3. 産経新聞 【風の間に間に】論説委員・皿木喜久 「ローマの休日」の公と私
手元に「ローマの休日」の古いシナリオ本がある。南雲堂から発行されたシナリオシリーズの一冊で、英文と同社編集部による日本語訳の全文が掲載されている。 1953年製作の米映画「ローマの休日」は、今でも日本でアンケートをとれば、ベスト10に顔を出すこと間違いない名画中の名画だ。 オードリー・ヘプバーン演じるアン王女が、某国からイタリアを訪問中、公式行事に辟易(へきえき)してローマの町へ抜け出す。そこでグレゴリー・ペックの新聞記者と出会い、2人で1日だけの休日を楽しむ。 ウィリアム・ワイラー監督の巧みな演出とヘプバーンの魅力に世界中の映画ファンが酔った。「大人の童話」という評価もある。だが改めてシナリオを読むと、単なる「童話」ではないことがわかる。 彼女が王女� �あることを見破り、「世紀のスクープ」にしたい記者は見破られていることに気づかない王女からホンネを引き出そうと、カマをかける。例えば彼女の父親(実は国王)は何の仕事をしているのかと尋ねる。王女が答える。
「大抵はーいわゆる渉外係よ」
「そいつは大変な仕事だ」
「ええ、私ならやりたくないわ」
「お父さんは?」
「文句をいっているのを聞いたことがあるわ」
「どうしてやめないんだい」
「そっちの方の仕事をしている人はほとんど辞職することはないのよ。身体(からだ)が悪くてどうしても続けられないという時のほかはね」
よどみない会話の中に「国王」という「職業」の厳しさや孤独さがちりばめられている。だからどうしても入院中の天皇陛下のお仕事について考えてしまう。 現在、皇太子さまや秋篠宮さまが代わりを務めておられるが、あくまで陛下のご病気に伴う臨時の措置である。国事行為や宮中祭祀(さいし)は基本的には陛下にしかできない。 体調がすぐれず、われわれ一般国民であれば「文句」のひとつ言いたいときもあるかもしれない。それでも陛下は大震災の被災地の見舞いなど、淡々とそして黙々と仕事をこなしてこられたのである。「公人」の精神に徹しておられるのだ。 今回のご入院に際し、宮内庁はこれまでの疲労の蓄積もあげていた。それなら宮内庁も国民も、陛下のお仕事の厳しさや孤独さにもっともっと思いをい� �すべきだろう。 話を映画の方に戻すと、「ローマの休日」は、思わぬ展開を示す。2人が恋に落ちるのである。 だが王女は意を決してその思いをたち切り、宿舎の大使館に帰る。映画のクライマックスで、泣かせどころだ。だがもっと泣かせるのはこの後である。大使が「王女としての義務」をタテに「空白の1日」の説明を求めるのに対し、こう答える。
「閣下はその言葉を二度とお使いになる必要はないと思います。私が王家と国とに対する義務を全然自覚していなかったならば、私は今夜、戻っては来なかったでしょう。二度と帰っては来なかったでしょう」 丸24時間だけの「私」を満喫した後に生まれたみごとなまでの「公」の自覚である。
宮中晩餐(ばんさん)会より個人のパーティーが大事と言って恥じない防衛相、国益や公益そっちのけの政治家をはじめ、「公」に徹しなければならないすべての人に、かみしめてもらいたい言葉である。(論説委員)
4. 株式日記と経済展望 沖縄から豪州への海兵隊の移動は中国近傍からの撤退だし、TPPは米企業を儲けさすために日本経済を弱めてしまうものになる可能性が高い。
◆同盟国も責任分担を 米国防長官、予算削減で 10月12日 産経新聞
パネッタ米国防長官は11日、ワシントン市内で講演し、米政府の債務削減に伴い国防予算圧縮を迫られていることに関し、「(日本などの)同盟国にも自国の安全保障により責任を担ってほしい」と強調した。 パネッタ氏は米軍の規模縮小は避けられないとしながらも、「幅広い脅威に対応するため、能力の高い軍隊でなければならない」と指摘。ハイテク兵器の効率運用などを推進する方針を表明した。 ただ、予算削減後もアジアや中東などを重視し米軍のプレゼンスを維持していく考えを示した。 パネッタ氏は今後10年間で4500億ドル(約34兆5千億円)の国防予算削減を目標に掲げている。(共同)
◆中国包囲網の虚実(2) 11月17日 田中 宇
▼中国包囲網の「遠巻き」化
今回の件に関して中国では、マスコミが米国や豪州を批判する論調を載せているが、中国政府は米豪を非難していない。中国政府は米豪の行動に意表を突かれ、何も言えないのだという見方があるが、今回の動きは遅くとも9月に報じられ始めており、中国政府は十分に予測できたはずだ。むしろ、今回の件は中国にとって脅威になっていないので看過していると考えた方が妥当だ。(The U.S. expands military activity in Australia and stresses its Asian presence.)
今、海兵隊が駐屯している沖縄は、中国本土からの距離が約500キロだ。それに対し、来年から海兵隊が駐屯する豪州のダーウィンは、中国本土からの距離が十倍の5000キロもある。海兵隊は中国との敵対を強めるのでなく、中国の近くから撤退していくのである。米軍が初めて豪州に駐屯する点は「中国包囲網」という感じもするが、米軍は中国と露骨に敵対するのでなく「遠巻き」にしている感じだ。海兵隊にはグアムに移る予定の部隊もいるが、グアムは中国から約2500キロで、これまた撤退していく方向になる。 豪州への駐留は、中国とASEANが対立する南沙群島の近くに米軍を置くことを意味するという指摘もあるが、南沙群島までの距離は、沖縄から2500キロ、ダーウィンから3000キロだ。沖縄� �らダーウィンへの海兵隊の移動は、南沙群島に近づくことになっていない。 海兵隊の一部が沖縄から豪州やグアムに移ることの意味については、沖縄だと中国が自国の影響圏の境界線と考える「第1列島線」に隣接し、中国軍のミサイルが飛んでくる場所なので、もっと遠くて安全な「第2列島線」の外側である豪州やグアムに移るのだという指摘がなされている。(US and Australia tighten military ties September 14, 2011)
2つの列島線とは「中国は朝鮮半島から沖縄の西側沖合、台湾、南沙群島をつないだ第1列島線の西側を影響圏とし、米国は伊豆諸島からグアム島、フィリピン、インドネシアをつなぐ第2列島線の東側を影響圏として、相互に干渉しない」という米中の暗黙(ないし秘密)の了解事項のことだ。(第1、第2列島線の地図)(消えゆく中国包囲網)
今回の件が、第1列島線の近くにいる沖縄海兵隊を、第2列島線の外側の豪州やグアム島に移すことを意味するのだとしたら、それは、中国が日本(沖縄)を攻撃してきたときに米軍が日本を守るつもりがないことになり、日米安保条約が空文であることを意味している。米政府は、中国包囲網を作ることを示唆するが、具体的にやっているのは包囲網をしだいに「遠巻き」にすることだ。現実は、中国包囲網の強化とは逆の、第2列島線以東への撤退である。白を黒と言いくるめている感じだ。 オバマは豪州での演説で、今後の米国がアジア太平洋地域を重視していくことを強調した。オバマは豪州からインドネシアのバリ島に行き、米大統領として初めて東アジアサミット(ASEAN+日中韓印豪)に出席する。TPPでは、米国� �経済面でアジア太平洋を重視していることを示している。日本では、米国は急にアジアを重視するようになったと歓迎されている。 しかし、沖縄から豪州への海兵隊の移動は中国近傍からの撤退だし、TPPは米企業を儲けさすために日本経済を弱めてしまうものになる可能性が高く、米国は同盟国に対する思いやりに欠けている。米国は韓国に対しても、米韓FTAを通じ、韓国経済を痛めつけようとしている。米政府の「アジア重視」は、裏表があり、目くらましが多い。(貿易協定で日韓を蹂躙する米国)
(私のコメント)「株式日記」では、アメリカ軍は財政危機によって東アジアから去っていくだろうと言う長期予測をしています。「株式日記」はもともとは経済ブログでしたが、アメリカの経済破綻は先送りしているだけ� �FRBの力が尽きれば国債や不動産担保証券を買い支えきれなくなり、買えば買うほどインフレと金利が急騰してアメリカ国民は無一文になる。ドイツや戦後の日本や90年代のロシアに起きたことがアメリカでも起きるようになるだろう。それは現在のアメリカ政府やFRBがやっていることを見れば必然であり、中央銀行が大規模な国債や社債を買い支えるようになったら確実にインフレ爆弾が破裂する。アメリカン失業率は9%台のままだし、金融機関の倒産も続いている。アメリカの銀行もPIIGS諸国の国債を大量に買っているからだ。イタリアやスペインの国債利回りも7%を越えてきた。それだけ国債が値下がりしてアメリカの銀行やファンドが含み損を抱えている。現在はヨーロッパの金融危機に目が集まっていますが、確実にアメリ� ��経済にも波及する。問題はアメリカの財政で削れるところは軍事予算しかなく、10年間で34兆円の予算カットを目指している。アメリカは中東やアジアでの軍事的プレゼンスは維持するとコメントしているが、リップサービスと見なければ予算的な辻褄が合わなくなる。オバマ大統領のオーストラリア、東南アジア歴訪も外交的な攻勢で軍事的な後退を誤魔化そうと言うものだ。アメリカ軍は、やがてはアラスカーハワイーオーストラリアのラインまで後退するだろう。だからオーストラリアに初めて海兵隊基地を設ける。おそらく沖縄やグアムから移転するのでしょうが、日本の外務省や防衛省はそれを阻止するために辺野古に海兵隊基地を造ろうとしていますが、空っぽの軍事基地を作っても意味はないだろう。つまり台湾有事� �起きてもオーストラリアの基地は5000キロも離れている。マスコミの記事は例によって「オーストラリアの基地は中国包囲網」と大宣伝していますが、実際にはアメリカの防衛ラインの後退だ。もはや中国の中距離ミサイルによって第一列島線では防衛は不可能になり、オーストラリアまで後退するのだ。アメリカ政府は台湾に対してF16の売却を断った。その事によって米中の裏取引で台湾は中国に平和裏に併合されることになるのだろう。次期アメリカ大統領が共和党ならまた変わるでしょうが、オバマ政権では台湾や韓国は見捨てるつもりだろう。だからこそ韓国は焦ってTPP不平等条約にサインして土下座していますが、オバマ大統領は日本に対してもTPPで土下座を要求している。アメリカは既に韓国や台湾を諦めていますが、そ の前に投資した分をごっそりと持ち帰らなければならない。つまり韓国台湾は経済的にはアメリカに支配され外交的には中国に支配されるようになる。それでは日本はどうなるかが問題だ。日本は自主防衛の意志を固めなければ、韓国や台湾と同じ運命をたどるようになるだろう。もちろんアメリカとの防衛条約がありますが、アメリカは本気で中国と戦争するつもりはない。アメリカが中国に強く言っているのは南シナ海の自由航行権であり、それさえ米中で合意できればアメリカは引くかもしれない。中国の軍拡はアメリカにも脅威のはずなのですが、中国沿岸に関する限りアメリカ軍に勝ち目は無い。もし中国が負けそうになれば核ミサイルをアメリカに撃ち込むだろう。オバマ大統領のアジア重視政策は経済的な理由によるもので� ��り、中国包囲網だと脅せば中国はドルや米国債を買うだろうと言う狙いだ。それ以上の意図はない。最近のアメリカ外交は、同盟国には厳しく中国やロシアには甘い。言い方を変えれば核ミサイルをもつ中国やロシアには甘いが核ミサイルを持たない同盟国には露骨に収奪に来ている。それが米韓FTAでありTPPだ。もしこれがなければ私もアメリカの意図が見えなかった。オーストラリアやカナダやニュージーランドの動向を見ればアメリカの本質が分かるだろう。日本にはそれが分かる専門家がほとんどいない。
5. 泥酔編集長の日経の読み方 米国のアジア回帰を地域安定につなげよ
20日朝刊2面【総合・政治】社説1
米国のオバマ政権が対外政策の重心をアジア・太平洋地域に明確に移し始めた。イラクとアフガニスタンでの戦争終結にメドがついたのを踏まえた、戦略的な「アジア回帰」といえる。 この地域では中国の軍事的な膨張が目立つだけに同盟国の日本としては歓迎できる。アジア安定の要である日米同盟の深化へ向け、普天間基地問題の解決を急ぎ安全保障面の協力を強めたい。 ただ、米中関係が覇権争いの様相を深め軍事的な緊張が高まるようでは、日本の国益にならない。米国のアジア回帰を建設的に生かす、賢明な外交・安保政策を進める必要がある。
オバマ大統領は訪問先のオーストラリアで、アジア・太平洋は米国の国防政策の「最優先事項」だと宣言した。米海兵隊を初めて豪州に常駐させる計画も発表した。
海兵隊の基地となるダーウィンは、中国が広域的な主権を主張してベトナムやフィリピンなどと係争になっている南シナ海に近い。半面、中国のミサイルの射程外にある。中国をにらんだ戦略的な軍の再編である。
大統領は「中国が国際規範を守るよう促す」として、封じ込めを目指すわけではない姿勢を強調している。これに対して中国は「時代の潮流にかなう行為といえるのか」(劉為民・外務省報道局参事官)と反発している。
19日の東アジア首脳会議(サミット)を機に中国が温家宝首相と大統領の会談を急きょ求めたのも、米国の真意を探ると同時にけん制する思惑からだろう。
「米国のオバマ政権が対外政策の重心をアジア・太平洋地域に明確に移し始めた」と社説子は断じていますが、正直いってそれが本当なのかどうなのか、よく分からないのです。
オバマ政権発足当初は、いわゆる「パンダ・ハガー」な人たちを対中政策の中核に据えていましたがどうも上手くいかず、鳴り物入りで駐中国大使となったハンツマン氏も早々に辞任しています。
客観的にみれば、日米間の関係も「普天間移設問題」がトピックになったように、あまり芳しくないわけですし、北朝鮮問題に至っては何一つ動いておらず、オバマ政権に明確なアジア太平洋戦略なるものがあるのか大変疑わしい状態でしょう。
人権外交を押し付けたカーター・クリントン政権とも違う、価値観外交で中東からアジアまでの安定基盤を築こうとしたブッシュ政権とも違う、オバマ政権は何を目指し、何をやりたいのかさっぱり理解できないのです。
だからこそ、ホワイトハウスに本当にアジア太平洋戦略なんてあるのか、と思ってしまうのです。
こう言っては失礼かもしれませんが、オバマ大統領は菅直人氏と似ている所があって、思いつきとパフォーマンスに走り易い御仁だなと常々感じています。
「核なき世界」宣言も、そりゃ立派でしょう、しかし彼らが自画自賛している程には「核なき世界」に近づいていません。
むしろ、核拡散と核テロの危険性は増しこそすれ、それを除去する手立てを何も打ててないことは北朝鮮やイランへの対応でも明らかです。
そんな胡乱な政権に対し、何も疑わず脳天気に与していいのか、それはTPPしかりです。
アメリカがアジア太平洋の安全保障にコミットするのは大いに結構ですし、中国にエンゲージすることは日本にとっても国益です。
しかし、出たとこ勝負の思いつき政策じゃ、最後までアメリカは面倒みる気があるんですか、という部分で不安を覚えます。
上手くいかないから、やっぱ止めただとむしろアジアは混乱するだけだし、日本も二階に上がって梯子を外されることになりましょう。
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6. 日曜経済講座 【日曜経済講座】
編集委員・田村秀男 増税の前に脱デフレを
■このままでは国民皆「茹で蛙」
国会では東日本大震災からの復興に向けた2011年度第3次補正予算案に続き、復興増税法案が月内成立の見通しだ。
◆甘すぎるコーヒー
復興債償還財源に使う所得税の臨時増税は25年と長期にわたる。増税期間の引き延ばしの結果、1世帯当たりの所得税年間負担増は薄められ、財務省の試算では年収500万円の場合で1600円、800万円だと7360円という。野田佳彦内閣と民主、自民、公明の3党は「月にならすと負担額はコーヒー1、2杯分にすぎない」と納得したわけだが、甘すぎる。増税路線は慢性のデフレ病をさらにこじらせるからだ。 グラフは総理府の家計調査データから作成した。物価下落を上回る幅で国民が消費や貯蓄に回せる可処分所得が下落し続けている。可処分所得のもとになる世帯主の収入が細っているためで、家電製品や身の回り品の価格が下がっても、100円ショップで何でも買えても、暮らしぶりはより貧しくなるのが� �本のデフレ病の特徴だ。2010年のサラリーマンのひと月当たり可処分所得は13年前の1997年に比べ6万6700円、13・4%減ったが、前年比で平均1%、4770円ずつ下落している。 ◆超長期で縮む所得
同じデフレ不況とはいえ、賃金が3年間で一挙に45%も減った1930年代の大恐慌時の米国に比べると、今の日本は極めて緩やかで超長期にわたり所得が縮む。当時の米国のデフレは11年間で終わったが、日本は延々と続き、出口が見えない。米国の名目賃金は大恐慌勃発(ぼっぱつ)から12年目の日米開戦年で大恐慌前の水準に戻ったが、日本は昨年まで13年間も下がり続け、ことしはさらに下振れしている。 こうみると現代日本病のデフレ病は大恐慌時の米不況を期間と規模で上回る深刻さ� �あるのだが、上記の国会論議のように概して危機感に乏しい。日銀も「デフレが問題だ」とようやく認めるようになったが、あいまいな「包括緩和」政策に固執し、はっきりとした金融の量的緩和に踏み込まない。ビジネス界や経済学者の主流も大手経済メディアもそんな日銀政策をそのまま受け入れる声が目立つし、財務省の増税路線に同調する見解が多い。慢性デフレに世の中が麻痺(まひ)したかのようだ。 ここで思い起こすのは、「茹(ゆ)で蛙」の寓話(ぐうわ)である。蛙は常温の水を入れた鍋に入れられ、時間をかけて熱せられてもじっとしている。するといつの間にか茹で上がってしまう。日本のサラリーマンは蛙と同じように、少しずつデフレ水の温度を上げられているために、何かおかしい、懐具合がどうも悪いな 、と思いつつも、そんな日常に順応してしまう。昼食をコンビニ弁当に切り替え、割安な社員食堂でラーメンをすすり、夜は外での同僚との飲み食い回数を減らす。復興関連の負担増は所得増税に限らない。年1千円の住民税負担増(2014年6月から10年間)や地方の退職所得減税の13年1月から廃止も盛り込まれている。このほか、野田政権は年金保険料の引き上げや医療・介護の負担率引き上げに加え、2013年あたりからの消費税率を小幅で段階的に引き上げ、10%にしようともくろむ。消費増税には政局がからみ、予断を許さない情勢だが、野田氏は復興増税同様、財務官僚のシナリオ通り、国会で押し切るつもりだ。
◆政治家は現実見ろ
財務官僚が仕込んだ盛りだくさんの国民負担メニューを唯々諾々と受け取り、家計や企業に押し付けるだけなら、政治家も国会も議院内閣制度も不要である。財務官僚主導の政策の枠組みにどっぷり染まってしまった野田首相や安住淳財務相に物申すのはもはやむなしいが、有権者と国家の将来に全身全霊をささげる覚悟のある政治家ならデフレの現実を直視してほしい。 経済学の常識からしても、個人や企業は、明日、1週間後、ひと月後、あるいは来年、数年後を見越して、今消費するか、無理してでも貯蓄するか、投資するかを決めるものだ。デフレで所得が毎年着実に減っている上に、増税などで可処分所得はさらに減る。そうなら、家計は消費を、企業は投資を控える。カネは動かず、雇用は縮小の一途をたどる。税収は� �目の国内総生産(GDP)の伸びに比例するのだから、増税によるデフレ効果が大きければ所得税収も法人税収も減る。サラリーマンどころか、日本国全体が茹で蛙になりかけている。 野田政権も日本の復興・再生を使命とする言葉に偽りがないなら、日銀もしっかりと巻き込んで責任ある脱デフレと成長のための戦略を打ち出し、脱デフレが確実になるまで増税を避けるのが当然の選択ではないか。
7. 衰えぬプロ野球人気、高視聴率に経済効果
ソフトバンクと中日が第7戦までもつれこんだプロ野球日本シリーズ。野球人気に陰りが指摘される中、福岡では驚異的な視聴率を記録し、大きな経済効果が見込まれるなど盛り上がりを見せた。 福岡県は過去の優勝時の実績を基に、クライマックスシリーズと日本シリーズを合わせた県内の経済波及効果を約388億円と試算。うち百貨店などのセールの売り上げが約237億円、観客の交通費、飲食代などが約96億円とはじき出した。 中日が日本一の場合、中部地方への経済波及効果を約219億円と、共立総合研究所(岐阜県大垣市)は計算。「地域の一体感が生まれて潜在的な消費マインドに火が付き、数字以上の効果をもたらす」と分析している。 テレビの視聴率も北部九州地区で軒並み跳ね上がり、ビデオリサー� �によると、第5戦では平均視聴率34・0%、瞬間最高視聴率は48・7%に達した。
8. 産経新聞 第1回神戸マラソン 元五輪代表中山竹通さんの長男が優勝
「第1回神戸マラソン」(兵庫県、神戸市など主催)が20日午前9時、号砲の合図とともにスタートし、約2万3千人が、阪神大震災から復興した街並みを駆け抜けた。 東日本大震災の被災地からも641人がエントリー。宮城県亘理町から参加した小野寺浩子さん(50)は「震災から復興した神戸の街を見ながら走り、元気を持って帰りたい」と意気込みを語った。この日はクオーターマラソン(10・6キロ)も同時開催され、車いすの人たちもさわやかな汗を流した。 フルマラソンのランナーは、鉄人28号モニュメント(長田区)、須磨海岸(須磨区)などを走り抜け、折り返し地点の明石海峡大橋のたもとをターン。右手に海を臨みながら神戸ハーバーランドなどを通り、ポートアイランドの市民広場付近でゴール� �るコース。沿道には多くの市民らが応援に立ち、「がんばれー」などと声援を送っていた。 フルマラソンでは、神戸市出身の早稲田大学競走部4年、中山卓也さん(22)が優勝。ソウル五輪とバルセロナ五輪の男子マラソンで2大会連続4位に入った中山竹通さんの長男という、"サラブレッド"の卓也さんは「長期間休部していて、練習も一人でやってきた。フルマラソンは初めてで不安だったが、地元神戸の大会で完走でき、結果が出たことはうれしい」と話していた。